読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

こだわりの店にいってみた

土曜日に仲間とサシ飲みした。お互い、日本酒が好きなので、日本酒にこだわるバーみたいなところに行った。食べログの口コミでは「少々制限が多いがいい店」みたいなことが書いてあって、どんなアングラな怖いマスターの店だろうと思ったら、とても清潔感があって、いい店だった。8人くらい座れるカウンターに、テーブル席が3つほどの小さな店だ。気になったのは、メニューに「飲めない人は入店禁止」とか「吐いたら3万円」とか書いてあった。たしかに若干めんどくさい感じはした。幸い飲めるし、吐くまで飲んだりしないから、私には関係ないやと思った。私たちはカウンターの奥の席に陣取って飲み始めた。

私たちは日本酒を数杯飲んで、いい感じで話が盛り上がっていた。そんなとき、4人のグループが入ってきた。カップル2組で、20代前半くらいの風貌だった。ちょっとちゃらっとしていて、にぎやかで、ああいう子たちも日本酒飲むんだ~と思った。

その中の一人の男の子がトイレに立った。そしてトイレから出てくると同時に、マスターがその男の子のところに行って、「おめー、痰吐いてんじゃねえよ。自分家だったら吐くのかよ、え?今すぐ拭けよ」とすごんだ。私の席からはその様子が丸見えで、言ってる言葉も表情も全部わかった。

私はとても動揺し、動悸がし、頭の中が真っ白になった。すぐにその場から逃げ出したくなった。その男の子はきちんと拭いて、マスターに謝った。とりあえずそれでお開きになったのだが、その後もマスターの怒りは収まらず、カウンターの中でも、アルバイトの女の子に「自分の家だったら吐くのかよ、ありえないだろ!たぶん奴ら大学生だな」とか私にもばっちり聞こえるように話している。私は、気にしないように、一生懸命それまでの会話を続けた。でも、店を出るまで、私は上の空だったし、その同様や動悸は納まらなかった。

 

都心に一人で店を構える。しかもこだわりのものを出す、小さな店。とてもお金がかかるだろうし気合の入ったものなのだろう。それを切り盛りするのは大変だろうし、飲食店で酒を出すとなると、よくわかんない客もいっぱい来るわけだ。それをどうにかしたいというマスターの気持ちもわかる。自分好みの客だけ来ればいい、という店。

私は誰かのおすすめに乗っかって楽しむのが好きだ。だからこだわりのマスターがいろいろ教えてくれる店は好きだ。でも、こだわりすぎて客にいろいろ強いてくるタイプの店はしんどいな、と思った。客を怒鳴ったりすごんだり、その叱られる当事者だったら嫌なのは当然だけれど、それを見ているのもしんどい。怒鳴る、すごむというのを見ると、幼いころの父親からの暴力の記憶がフラッシュバックする。今思い出しただけでも、手が震える、冷や汗が出そうになる。

とてもお酒のおいしいお店だったけれど、たぶん、次は行かないと思う。

 

おしまい