もう一度子供時代に戻りたいか?

子供のころ、欲しかったのは毎日何の変化もない平凡な日々と、自分の約束を守る親である。

私がそればかり覚えているからかもしれないが、とても平和な日と、家がめちゃめちゃになる日が交互にやってくる、というのは子供の私にとってはかなり負担であった。今日、男親は陽気に酔うだけだろうか、それとも目の色が変わるだろうか。母が職員会議や飲み会で遅くなる日は、朝から相当気が重く、今日もあれがあるのかと思うと、本当に泣きそうだった。

男親のアルコールの問題で、警察や救急車を呼んだのは一度や二度ではない。しかも呼んだのは母ではない。私たち兄弟だった。なぜなら男親は母親のいないときに飲むからだ。警察は民事不介入なので、私たちがどれだけ怖かったとしても、困っていたとしても、助けてはくれなかった。母親は口に出して責めたりは確かしなかったと思うが、警察を呼んだことを体裁が悪いと思っているようだった。それが、飲んだ父親から包丁を持って追いかけられた日であっても、母親はなんとなく”体裁”のほうを気にしているようだった。

母は何度も男親に、「次飲んだら別れる」といい、男親は「もう飲まない」といった。私は、喜んだ。「もうおとうさんはのまない。そしてもしつぎなにかあったら、おかあさんはおとうさんとわかれて、わたしたちはへいわにくらせる」そして何度もその約束は破られ、何度も家の中はめちゃくちゃになった。約束なんて、何の意味もない。今でも、私は”約束”という行為に対して不信感がある。

 

日々が安定しているというのは、なんという愛情だろう。私が今でも一番欲しいのは、安定した日々、約束を守る自分と相手、である。それを手に入れるために、私はここまで生きてきて、ある程度手に入れた。相手はいつか約束を破るかもしれないが、私が私との約束を破らなければいいのだ。できるだけ、私も相手に対して”私自身が安定している”、という愛情を見せたいと思う。

もう一度子供時代に戻りたいか?愚問だ。断固拒否する。

 

おしまい

今週のお題特別編「子供の頃に欲しかったもの」