ミョウガLOVE

夏に熱愛するもの、それはミョウガである。ミョウガは可愛い。渋めのピンク色でふっくらしている。その姿はまるで天女のようである。ミョウガは美味しい。独特の香りと歯ざわり、一口入れるたび夏を感じる。
ミョウガで食べる冷奴はうまい。ミョウガは縦半分に切ってから斜めに切ると歯ざわりが一層際立つのである。そこに豆板醤とごま油、醤油を垂らす。豆板醤という調味料の旨味をミョウガが引き立てる食べ物である。ミョウガは刻んだのを鰹節かけて醤油まわしかけて食べるだけでもうまい。
夏が進んでくると、ミョウガは徐々に値上がりしていく。ミョウガは夏真っ盛りというよりも初夏の食べ物らしいと気づいたのは最近のことである。だから、出始めたらどんどん食べなければならない。ぼんやりしているとすぐひとパック150円になり、180円になる。暑い日にミョウガで食べるひやむぎは最高である。
私とミョウガとの歴史は長い。阿蘇にある祖母の家の中庭のようなところにどっさり生えていた。時期になるととってもとっても取りきれないほどのミョウガが顔を出す。ミョウガはちょっと放っておくと頭のてっぺんから白い花を出し始めるので気をつけなければならない。まあ、そもそもミョウガは花芽なので、花も食べても別に大したことではない。その市販品よりもやや貧弱なミョウガを摘み、それでそうめんを食べた。そうめんは大きなガラスの器に氷水と一緒に入れられていた。風鈴がなって、甲子園の音が聞こえた。ばあちゃんが〇〇ちゃん、もっと食べんね、と私に声をかける。
大学の頃、大家が農家の下宿に住んでいた。そこでは入居者が勝手に使って良い畑があり、私は一緒に入居していた仲間と畑を作っていた。その周りには昔から根付いているミョウガがわっさり生えていた。花芽も食べたが、ミョウガタケと言って葉の部分をよく食べた。その頃付き合っていた彼氏が家庭の味だと教えてくれたナスとかの夏野菜とミョウガタケを刻んだやつをめんつゆで煮て、あったかいだしで冷たいそうめんを食べる、というメニューをよく作って食べた。その人が私によく暑いのにそうめんとか茹でれるね、と言い、私は、そんなこと考えたこともなかった、そうめん好きだから茹でるのは当然だと思ってた、と返した。その人はネギを食べた後、必ず、口がネギの味がする!といった。私はそんなこと考えたことなかった、と思った。嫌なら食べなきゃ良いのにとも思った。
今は村井さんちのレシピが私をつかんで離さない。トマトの薬味にしつこいほどミョウガを入れる。
ミョウガなんて見たことも聞いたこともなく育った同居人に、ミョウガを食べさせる。同居人は私のご飯を美味しい美味しいとなんでも食べる。同居するなら雑食のひとを選ぶに限る。もし私が海外移住するとしたら、必ずこっそりミョウガを持って入国し、庭で栽培する。そして、ミョウガ屋になる。願わくばミョウガが育つ地域に移住したい。

おしまい