クロとみーさん

クロ、とみーさん、という猫を飼っていた。実家にいたころなので、もうずいぶん前の話で、クロもみーさんも死んでしまったが、今でも実家に帰ると猫がいないことが不思議な気持ちになる。それほど、彼らは家族の一部だった。一番世話をしていた父は、クロが死んだ後相当落ち込んだらしい。いつも一緒に寝ていたし、いつも父はクロに話しかけ、会話していた。人に弱みを見せるのが嫌な父だが、クロには心を開いていた。

猫を飼いたいと言い出したのは私だ。中学校に入りたてだった私は、友達に「うちのネコが赤ちゃんを産んだんだけど、いる?」と聞かれ、猛烈にほしくなってしまったのだった。母に話し、家族会議で猫を飼うことに決まって、少しずつ用具を集めた。

明後日、クロをもらいに行く、という日に家に帰ると、そこにはみーさんがいた。母が、1匹も2匹も一緒でしょ?と言って、公園に捨てられていたみーさんを拾ってきたのだった。みーさんは、みーみーとよく泣いた。白地に淡いぶちが入っている、とても可愛いメス猫だった。私はその3日後、クロをもらいに行った。

友達の家に行くと、黒猫が何匹かいて、私はその中の1匹を抱いて自転車に乗って帰った。小さくて細くて、いきなり親元から離されたクロは私の胸のところで、泣きながら爪を立てていた。ちょっと痛かったが、とてもあったかくて、とても可愛くて、私はとてもうれしかった。黒猫だったから、名前はクロ。シンプルである。

二匹とも、子猫だったが、1か月もしないうちにどんどん大きくなり、すぐに立派な猫になった。どっちのネコもとても穏やかな性格で、私がどれだけちょっかいをかけても、のったりと受け入れてくれた。お風呂に入るのと、掃除機が嫌いな猫であった。基本的には穏やかなのだが、クロとみーさんは時折激しく追いかけっこをした。うちではそれを運動会、と呼んでいた。彼らは時に仲良く、時に喧嘩して暮らしていた。

クロとみーさんを飼っていた頃、うちはとても大変だった。私と兄は思春期で、父はアルコール依存で、母は一人働いていた。その、しんどい日々を、彼らが少し楽にしていた。いまだに、クロとみーさんに会いたい。久しぶりに実家に帰った時、私の顔をしげしげと眺め「この人誰だっけ?ま、いっか」という顔をするのを見たい。

同居人も実家で猫を飼っていて、犬も好きなので、将来は犬と猫を飼おう、と約束している。名前ももう決めていて、「モチ」と「トーフ」である。彼らが我が家にやってくるまでは掃除ロボットルンバの「のりちゃん」と楽しい日々を過ごそうと思う。

お題「我が家のペット」